傑作将棋アンソロジー 棋士という人生 

コンサルタントという仕事をはじめてからも

私はビジネス書をほとんど読まない。

それよりも「人」を知りたくてしようがない。

だから小説をよむ。

商売は最終「人」相手だもの。

 

この本は、将棋のプロ棋士の生き様に触れた気分になれる。

そして、その厳しさに商売の厳しさを重ねてしまう。

 

頂点を目指して極められるのはほんの少数。

あがき、逃げ、焦り、一人戦い続ける様に引き込まれていく。

将棋も棋士もまったく知らない私でも問題なく読める。

(棋譜に触れた部分だけは飛ばし読みしてしまったのはお許しください)

 

決してハッピーエンドではない中で

それでも辞められない辞めたくない感情を抱えて生きる人生。

私が、商売うまくいかず借金を抱え商売止めるわけにもいかなかった

あの頃が傍らに蘇ってくる感覚と共に読み進みました。

 

20名の著者エッセイを、棋士である著者の大崎善生が編んでいる。

(一冊の本で目いっぱい豪華な執筆陣ですよ)

一人の棋士を違う著者が取り上げていたり

エッセイの主人公が生きる時代が少しずつズレていることで

不思議な連鎖が生れる。

まるで遺伝子のらせん階段のような本だと思った。

(しかも、そのらせん階段はゆっくりと回転している状態ね)

 

棋士という人生を歩むに至った人たちの軌跡は興味深い。

ギリギリの体験からでた言葉は多くの気付きを与えてくれる。

読みながら何度「うぅーん…すごい」と唸ってしまったことか。

ここで紹介したくなるけれど、それは無粋だからやめておく。

やっぱり本は自分で読まなくちゃね。

特に、自分の商売にかじりついている人に読んでほしい。

 

楽しい事ばかりじゃないのが商売だけど

そんな中でよりどころにしたい言葉がたくさん拾える本だから。

 

読み終わって思い当たったことがある。

ニュースレターを何人かのスタッフで書いたり

店舗のブログを何人かで書くと

不思議な魅力が出るときがある。

アレはコレなんだなぁ。

一つのテーマを何人かの視点で書く魅力。

もちろん…テーマ自体は一考の必要があるけれど。

棋士という人生: 傑作将棋アンソロジー (新潮文庫)